SBI新生銀行は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言への賛同を表明しております。

SBI新生銀行グループの気候変動課題への取り組みについて、TCFDのフレームワークに沿ってご説明します。

ガバナンス

持続可能な社会の実現のためには、気候変動への対応は不可欠であると認識しており、サステナビリティ重点課題のひとつとして「気候変動などの環境課題への対応」を掲げています。気候変動への対応に資する事業への投融資など、さまざまな取り組みを通じて社会的な価値創出と、当行グループの中長期的な企業価値向上に努めています。

 

> サステナビリティ経営推進体制

> ポリシー・方針

戦略

機会

気候変動の解決に貢献するビジネスを支援

当行グループは、持続可能な社会を実現するためには、地球環境問題、とりわけ気候変動への対応が極めて重要であると認識しています。気候変動はビジネスリスクであると同時に、大きなビジネス機会でもあるととらえています。当行グループは、金融機関として気候変動の解決に貢献するビジネスを展開するお客さまをさまざまな形で支援することは、当行グループ自身のビジネス機会にもつながり、ひいては気候変動の解決に貢献することにもつながると考えています。
このような認識のもと、当行グループでは金融領域と非金融領域の両面から、気候変動解決に寄与するお客さまを支援しています。

金融領域での課題解決支援~グリーンファイナンスの推進

法人ビジネスにおいては、当行サステナブルインパクト推進部が各ビジネス関連部署と連携しながら、サステナブルファイナンスを組成・実行し、気候変動解決に貢献するお客さまのビジネス支援を行っています。サステナブルファイナンスの組成・実行にあたっては、グリーンローン原則やサステナビリティ・リンク・ローン原則など、国内外の関連原則と整合した「新生グリーンファイナンス・フレームワーク」や「新生サステナビリティ・リンク・ローン・フレームワーク」を策定しており、サステナブルインパクト推進部の内室であるサステナブルインパクト評価室が、対象となるファイナンスについてフレームワークへの適合性などを評価しています。

 

こうしたサステナブルファイナンス商品を活用し、サステナブルインパクト評価室は2022年度、計20件(総額772億円)の気候変動対応に資するファイナンスを評価し、実行に至りました。この中には、環境改善に寄与するプロジェクトなどに資金使途を限定した「新生グリーンローン」や「新生サステナビリティローン」、またサステナビリティ目標の達成状況により金利条件が変動する「新生サステナビリティ・リンク・ローン」のうちCO2排出量削減に関連する目標設定をした案件が含まれます。2022年9月に株式会社九州リースサービスに対して実行したサステナビリティ・リンク・ローンでは「温室効果ガス削減に寄与する環境関連資産の資産残高」をサステナビリティ目標指標として設定し、当行を含む計7社の金融機関が参加するシンジケートローンとして組成しました。上記のサステナビリティ目標指標の設定により、グリーンアセットが今後増加するという波及効果も期待できると考えています。

 

当行は、グループ中期ビジョンの基本戦略の一つである「事業を通じたサステナビリティの実現」において、「地域金融機関や企業、住民、自治体の支援を通じた地方創生への取り組み」を掲げ、太陽光・風力・バイオマスなど再生可能エネルギー事業などに対するシンジケーション形式でのサステナブルファイナンスの組成など、地域金融機関と連携した取り組みも強化しております。かかる取り組みの一環として、2022年12月に株式会社福島銀行に対して実行した「新生サステナビリティローン」では、サステナブルファイナンスを実行するだけでなく、福島銀行におけるサステナブルファイナンスの推進体制構築も支援しました。これにより、本案件で実行した融資資金の一部は福島県内の再生可能エネルギー事業にも充当され、地域金融機関におけるサステナブルファイナンスの普及や地域における気候変動に資する資金循環の創出に貢献する取り組みとなっています。

 

また、2022年度からは、新たにポジティブ・インパクト・ファイナンスの取り扱いも開始しています。ポジティブ・インパクト・ファイナンスは、環境・社会・経済の3つの側面について、いずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出すことを意図するファイナンスです。同ファイナンスは、資金使途が限定されない点で「新生グリーン/ソーシャル/サステナビリティローン」と、また金利変動などの貸出条件との連動が必ずしも伴わない点で「新生サステナビリティ・リンク・ローン」とも異なる商品ですが、お客さまの事業全体を分析し、コア・インパクトを特定したうえで、ネガティブインパクトの低減とポジティブインパクトの増大を実現するべく、建設的な対話を行うことを前提とした商品です。こうしたさまざまなサステナブルファイナンス商品も活用しながら、気候変動の解決に貢献するビジネスへの資金循環の創出を目指してまいります。

脱炭素化に向けた段階的な移行(トランジション)の 支援推進

「脱炭素社会」の実現に向けては、技術面およびコスト面の双方において、すべての国・地域や産業が一足飛びに脱炭素化が可能なわけではなく、既に脱炭素(グリーン)に資する領域にある事業への取り組みに加えて、トランジション段階にある技術を導入することで最大限排出削減を進める必要があります。このため、特に排出削減が困難なセクターのお客さまが、長期的なトランジション戦略に沿った脱炭素化を実現させるためのファイナンス手法として、トランジションファイナンスが重要な役割を担っています。トランジションファイナンスでは、資金調達者による信頼性が高いトランジション戦略の構築・開示とともに、資金供給者が資金調達者との対話を通じてその着実な実行を支援・促進することが鍵となります。当行でも、温室効果ガス(GHG)排出量の多いセクターを金融面から支えると同時に、これらのセクターの脱炭素化を支援していくことは気候変動の取り組みにおいて不可欠であり、また金融機関にとっての社会的責任であると認識し、脱炭素化に向けた段階的な移行であるトランジションの取り組みを積極的に支援していきます。お客さまのトランジションの取り組みを支援していくため、当行では部署間横断のトランジション・タスクフォースを組成し、お客さまとの対話を行っているほか、ビジネス機会の観点も踏まえた戦略的なトランジション支援の検討などを行っています。

 

2023年4月には、当行初のトランジションファイナンスとなるクライメート・トランジション・ファイナンスを株式会社JERA向けに組成し、地域金融機関とも連携し、当行を含む計10行による協調融資として実行しました。本件の組成にあたっては、サステナブルインパクト評価室がお客さまの中・長期的なトランジション戦略などをレビューし、国際的な指針である「クライメート・トランジション・ファイナンス・ハンドブック」など関連原則への適合性を評価しました。今後も、トランジションファイナンスを活用し、対話を通じて、お客さまのトランジションの着実な実行を支援・促進する役割を果たしていきます。

非金融領域での課題解決支援

排出量削減を中心とする気候変動分野では、既に取り組みを進められているお客さまのさらなる取り組みを支援することはもちろんのこと、そもそも自社排出量を算定できていない、また、どこから排出量削減を始めたらよいかわからない、という課題をお持ちのお客さまもいらっしゃることがわかりました。このため2022年度からは、これまでの投融資提供に加え、新たに非金融領域でのソリューションの提供を開始しています。具体的には、CO2排出量の見える化・削減クラウドサービスを展開する企業、在庫分析の高度化や不良在庫抑制を通じた廃棄ロス削減などを目的としたソフトウェアサービスを提供する企業、GHG排出量算定クラウドサービスを展開する企業と、それぞれ顧客紹介契約を締結しています。現状、排出量削減の取り組みが進んでいないお客さまにとっては、まずは自社やサプライチェーンの排出量がどの程度あるのかを認識することが重要です。また廃棄ロスの削減を通じた排出量削減という切り口も提供することで、気候変動対応に係るお客さまの取り組みフェーズやビジネス形態に合わせた多様な支援を行うことができるよう、体制を整えています。こうしたパートナー企業とも協働し、お客さまの気候変動への取り組みを、金融・非金融の両面から支援していきます。

リスク

気候変動リスク

気候変動リスクは主に物理的リスクと移行リスクに分類されます。

 

物理的リスク:

気候変動による災害等により顕在化するリスク。洪水、暴風雨などの気象事象によってもたらされる財物損壊などの直接的インパクト、グローバルサプライチェーンの中断や資源枯渇などの間接的インパクト等が想定されます。

移行リスク:

脱炭素社会へ移行する過程で発生する企業等の事業上および財務上のリスク。GHG排出量が大きい事業や資産の再評価によりもたらされるリスク等が想定されます。

セクター別の気候変動リスクの整理

気候変動の影響を受けると思われるセクターについて、その気候変動リスクを定性的に評価しました。当行グループでは、定性評価の結果およびエクスポージャーの大きさに基づき、セクターおよびアセットタイプごとに優先順位を付けたうえで、定量的な分析などによるリスクの深掘りを実施しています。

シナリオ分析

気候変動への対応を経営上の重要課題のひとつと位置づけ、日頃よりモニタリングしている景気変動と2次元でシナリオの世界観、機会とリスクを整理しました(詳細は、以下のシナリオ分析マトリックスをご参照)。また、世の中が2℃以下のシナリオに向かっていることを受けて、当行グループの対応状況をまとめました。


気候変動リスクについて当行グループに重要な影響を与える投融資先セクターを特定するにあたっては、前述のリスクヒートマップのとおり、セクターごとにリスク評価を実施し、当行グループの投融資先ポートフォリオの構成から、重要度の検討を行っています。物理的リスクの高いセクターは「不動産(含む個人向け)」、移行リスクの高いセクターは、「電力ユーティリティ」「海運」「石油・ガス」に着目しています。これらのセクターにつきそれぞれ物理的リスクの定量化、移行リスクの定量化の結果を開示していく方針です。

 

物理的リスクについては、これまで、国内不動産ノンリコースローン、住宅ローン、国内プロジェクトファイナンス、および新生フィナンシャルの個人向け無担保ローンについて定量化しました。物理的リスクの影響額を試算したところ、2050年にかけての与信関連費用は累積で55億円から90億円程度と予測しています。現時点で早急に対応策を打つ必要はないと思われる水準であるものの、継続してモニタリングし、定量化範囲の拡大を検討していきます。

 

移行リスクについては、電力ユーティリティ、石油・ガスセクターに加えて、今回新たに海運セクターの影響額を試算したところ、2050年にかけての与信関連費用は累積で65億円から280億円程度と予測しています。脱炭素社会への移行に向け、取引先とのエンゲージメント強化やリスク管理体制の強化につなげていきます。今後も定量化範囲の拡大を検討しつつ、脱炭素社会への移行に向けた課題の解決に資するプロジェクトや事業者への投融資に積極的に取り組んでいきます。

リスク管理

責任ある投融資に向けた取組方針

当行グループでは、責任ある投融資を推進する体制の高度化を目的として、2021年7月に責任ある投融資に向けた取組方針を制定しました。環境問題および社会課題に適切な配慮をしない企業と取引することを経営リスクととらえており、一部の特定事業に対する投融資については環境および社会に対する重大なリスクがあるという認識のもと、取引を禁止もしくは制限しています。

気候変動の観点では、予防的アプローチに基づき、新設の石炭火力発電の建設を使途とする新規の投融資をせず、石炭火力発電所向け投融資額の圧縮を進めています。

赤道原則(Equator Principles)

社会的にポジティブなインパクトを創出していくために、当行グループは、資金の出し手として環境・社会への配慮をお客さまに働きかけることが役割であることを強く認識しています。プロジェクトファイナンス等における環境・社会リスクの管理体制を強化することが不可欠と考え、当行は2020年4月、赤道原則を採択しました。大規模な開発を伴うプロジェクトへの融資に際しては赤道原則に基づき、プロジェクトの環境・社会への影響をレビューし総合的な意思決定をすることで、企業としての社会的責任を果たすとともに、環境・社会リスク管理の高度化を図っています。

 

> 赤道原則への取り組み

ポセイドン原則

当行グループは、海運業界の気候変動リスクに対する金融機関の取り組みが重要だと認識しています。温室効果ガス排出量の削減は海運業界にとっても避けられない課題であり、ポセイドン原則を意識して対応することが、船舶ファイナンスにおける気候変動リスク管理において重要になってくると考えています。

 

当行は2021年3月、アジアで4番目の金融機関としてポセイドン原則に署名しました。船舶ファイナンスに積極的に取り組む金融機関としてポセイドン原則に則り、お客さまおよび海運業界全体のトランジションを金融面から支援するとともに、事業に伴う気候変動リスクを管理していきます。

 

今後は新造/若齢船や二元燃料船といった最新技術を搭載した船舶に対するファイナンスを強化することで、融資ポートフォリオの継続的な入れ替えを図っていきます。引き続きお客さまに加えて、海事産業を支える各種関係者とのネットワーク強化に取り組み、環境配慮船やグリーン/トランジションファイナンスの機会をとらえた好循環を創出していきます。

GXリーグ

当行グループは2022年11月に経産省主導で進められているカーボンニュートラルへの取り組みであるGXリーグ基本構想に賛同表明、2023年4月にGXリーグに参画しました。当行グループ自らが排出する温室効果ガスへの取り組みとして、都内にある日本橋と新川の拠点の電力については昨年度、再生可能エネルギーに切り替えました。また、投融資先の温室効果ガス排出量の削減について今後も、対話を通じて取り組みます。

指標と目標

事業を通じた気候変動課題への対応目標

再生可能エネルギーへの投融資は当行グループが強みとしてきた分野であり、環境・社会の課題解決に取り組むお客さまに資金提供することが金融機関の重要な役割であると考えています。

 

  • サステナブルファイナンス組成金額を2030年度末までに累計5兆円
  • 温室効果ガス高排出セクター企業のトランジション推進の支援

脱炭素化社会への貢献目標

当行グループでは2022年度、日本橋と新川の拠点の電気を再生可能エネルギーに切り替えました。これにより、グループ全体の温室効果ガス排出量を削減できました。当行グループが掲げる「エネルギー使用に伴う温室効果ガス排出量を2030年度末までにネットゼロ」を確実にするべく、引き続きグループ一丸となって温室効果ガス排出量の削減に取り組みます。
 

  • SBI新生銀行グループのエネルギー使用に伴う温室効果ガス排出量を2030年度末までにネットゼロ
  • SBI新生銀行グループの投融資先ポートフォリオにおける温室効果ガス排出量を、2050年度末までにネットゼロ
  • 石炭火力発電向けプロジェクトファイナンス融資残高を2040年度末までにゼロ

 

温室効果ガス排出量実績は温室効果ガス排出量報告書をご覧ください。

投融資先ポートフォリオGHG(温室効果ガス)排出量

当行グループは、投融資先ポートフォリオからのGHG排出量(※3)を2050年度末までにネットゼロとする目標を設定しています。併せて、当該GHG排出量実績をPCAF(※4)の公開する国際的な基準に準拠して算定しております。また、2022年度には当行の事業法人および住宅ローンの一部に加えて、プロジェクトファイナンス、不動産ノンリコースローン(※5)を対象として、投融資先ポートフォリオGHG排出量を計測しました。今後も段階的な対象アセットの拡大および算定精度の向上に取り組む予定です。

※1 当該GHG排出量は、PCAFの公開する国際的な基準に準拠し算定しております。詳しくはPCAF ”The Global GHG Accounting & Reporting Standard for the Financial Industry”をご参照ください。
※2 データ質スコア:投融資先GHG排出量の計測・推定アプローチ別に計測・推定精度を5段階でスコア化しており、値が小さいほど精度が高いことを表します。
※3 当該GHG排出量は、各投融資先のGHG排出量のうち、当行グループの寄与分を算出しています。
※4 当行は、2022年10月に、PCAF(Partnership for Carbon Accounting Financials)に加盟し、PCAFが定める透明性のGHGプロトコル(集計手法)により、投融資先のGHG排出量評価の高度化に取り組んでいます。
※5 PCAF基準における6アセットタイプのうち、事業法人は「上場株式およ
び社債」ならびに「事業融資および非上場株式」、 住宅ローンは「居住用不動産」、プロジェクトファイナンスは「プロジェクトファイナンス」、不動産ノンリコースローンは「商業用不動産」の算定方法に基づき、投融資先ポートフォリオGHG排出量を計測しました。