社長メッセージ

代表取締役社長 工藤 英之

新生銀行グループの持つ目に見えない競争力の源泉(無形資産の価値)とは何か
〜サステナビリティ経営のその先〜

2020年度は新型コロナウイルス感染症によって外部環境が大きく変化し、新生銀行グループの経営も大きな影響を受けました。財務的な影響に関しては財務総括メッセージにて詳細をお伝えしますが、簡単に経営成績についてコメントいたしますと、親会社に帰属する連結当期純利益は451億円と前年度と比較して4億円の減益となりました。今期の業績には持分法適用会社の株式売却益が97億円含まれており、それを勘案すると実質的には必ずしも業界他社と比較して優れた結果であったとは言えません。この経営成績の結果は重く受け止めています。

一方で、新生銀行グループが「持続可能な社会の実現」に貢献し、中長期的な収益力を向上させるための取り組みを着実に実行することを通じ、「新生銀行グループの無形資産の価値」を確実に強化できた1年であったと考えています。こうした取り組みは新型コロナウイルス対応としてではなく、中期経営戦略の一環としてのものですが、「with Corona」の中で取り組みをさらに加速させることができました。

ESG、SDGs、サステナビリティ、といった言葉の共通理念である、「中長期的な視点に立った持続可能な社会を実現する」ということへの貢献と、それを通じた持続可能な収益力の向上を、企業経営に求める声が年々高まっています。これを踏まえ、今回の統合報告書はこれを実現するための基礎となる「新生銀行グループの競争力の源泉(無形資産の価値)」をテーマに作成しました。

ポイントは、
1)新生銀行グループが社会・経済に独自の価値を提供するための、経営のベクトルを定めること
2)そのベクトルに向けた経営の推進のための、組織としてのケイパビリティとキャパシティの強化

と考えています。新生銀行グループにおいては、1)は「サステナビリティ経営」と定義し、2)については、無形資産の価値を強化するためにグループとしてさまざまな施策を実践しています。本メッセージにより、それぞれについてステークホルダーの皆さまによりよくご理解いただきたいと考えています。

 

今後の良いビジネス機会はサステナビリティの文脈に沿ったところにしかない

まず、新生銀行グループが目指す「サステナビリティ経営」について。 新生銀行グループでは、企業の社会的責任として、持続可能な社会の実現に貢献することを掲げ、環境問題や社会課題を意識した経営を行ってきました。そして今日、私たちは、今後の良いビジネス機会はサステナビリティの文脈に沿ったところにしかないと考えています。現在の経済・社会のあり方が続けられないという認識が世界中に広がっており、その課題にどう対処するのか、持続可能な社会とするためにどのように貢献していくのかを考えることがあらゆる事業者のテーマになってきています。その中で、既存の商品・サービスでは満たされないニーズを、誰よりも先に新しいビジネス機会として着目し、世に出していくことが、ニッチでユニークな新生銀行グループが果たすべき社会的役割であり、存在意義であると考えます。

これは、ESGやSDGs、サステナビリティのために収益性や事業成長を犠牲にする、ということを意味しません。企業としては利益を上げることが大前提であって、その利益は持続可能なものであることが以前よりも強く求められていると考えています。国内の再生可能エネルギーへのプロジェクトファイナンスにいち早く取り組み、国内トップクラスのアレンジメントおよびファイナンス提供実績を有していることは、その一例です。

また、これは、サステナビリティの文脈に沿わない既存のビジネスから単純に撤退する、という意味ではありません。サステナビリティの文脈に合うビジネスにトランジションさせることを金融の側面からサポートするのも新生銀行グループの役割だと考えています。もちろん、そうしたトランジションが実現できないビジネスからは、最終的には撤退することになるでしょう。

新生銀行グループが、サステナビリティの文脈に沿ったビジネスにどのようにして取り組んでいくのかについては、中期経営戦略の方針にすでに埋め込まれています。中期経営戦略では、既存の金融サービスでは満たされない、もしくはサービスそのものを享受できていない顧客セグメントを開拓することを目指しています。これを実現するため、グループ外の会社と協働する「価値共創による成長希求」を基本戦略のひとつとしています。

昨年発生した新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、急激な環境変化がありました。その結果、陳腐化が加速したビジネスがある一方、潜在的な社会ニーズが急激に具現化したビジネスが発生しています。加えて、新型コロナウイルス感染症による危機感は、サステナビリティの意識を人々の頭に焼き付けました。これまでも、いくつもの価値共創の取り組みをしてきましたが、大きくビジネス環境が変化し、伝統的なフレームワークではとらえ切れないビジネス機会が数多く生まれ、かつ危機でもある今の状況こそが、価値共創という戦略の取り組みを、加速させていく良いチャンスだと考えています。

ダイバーシティとインクルージョンが組織のDNA に組み込まれて初めて「サステナビリティ経営」が実現する

次に、上記のベクトルに向けた経営の推進のための、組織としてのケイパビリティとキャパシティの強化についてお話しします。

新しいビジネス機会をいち早くとらえるためには、組織として多様な視点を持ち、その多様な視点がぶつかり合うことで生まれるアイデアが重要です。そのためにはダイバーシティを推進すること、つまり多様な人材を活かす組織体制と文化が大事になります。多様な人材とは、女性活躍を推進することだけを意味するものでもなければ、特定のマイノリティの人材を活用することだけを意味するものではありません。組織はチームです。革新的な考え方を持つ人とともに保守的な考え方の人もいて良いですし、伝統的なビジネスに長く従事してきた人もいて、新しいものを作り出したい人もいる、さまざまな価値観が、ジェンダーやジェネレーション、国籍、あるいは育った環境など異なったバックグラウンドから生まれている、そういう多様な人材が組織で共存して、そこで多様な視点をぶつけあう健全な組織であることが大切です。

そして、自分と違う価値観や考え方の持ち主を受け入れて、ぶつかり合い、そこから何か新しいものを生み出す「創発」に参加することが、新生銀行グループの社員が目指すインクルージョンです。こうしたダイバーシティとインクルージョンが、単なる外部アピール用のお題目ではなく、組織のDNA に組み込まれて初めて新生銀行グループが目指す「サステナビリティ経営」が実現する、と考えて取り組んでいます。

これを推し進めるため、女性活躍推進はもちろんのこと、兼業や副業の双方向の自由化、アルムナイと呼ばれる退職者再雇用制度の導入、在宅勤務の拡充など、働き方の自由度を高め、多様な才能に活躍の場を提供する体制整備を「働き方リ・デザイン」として進めていました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大前から在宅勤務の体制整備を進めていた新生銀行グループは、「with Corona」にすぐに対応できました。ただ、実際にやってみると、日本の住宅事情特有の問題もわかってきました。今はサテライトオフィスも大幅に整備し、メインオフィスの役割の見直しと併せて、それぞれの社員に最適化された「働く場所」と快適な「働く空間」のあり方を模索しています。こうした働き方改革のトライアルを、コロナ禍だからこそ危機感を持って加速して進めることができ、世の中の流れよりも素早く環境の変化に対処できていると思います。これら一連の取り組みは、中期経営戦略のもうひとつの基本戦略、「ケイパビリティの強化・活用」にほかなりません。

サステナビリティ・トランスフォーメーションを誰よりも先に実現する企業グループへ

最後に。新生銀行グループは、2021年1月にグループサステナビリティ委員会を立ち上げました。サステナビリティ経営をグループベースで強化・高度化させることを企図したものです。これまで説明してきたとおり、中期経営戦略の取り組みを推進することが、そのままサステナビリティ経営を推進する文脈につながっていますが、「サステナビリティの取り組み=経営戦略そのもの」になる時代もすぐそこまで来ていると考えています。新生銀行グループは誰よりも先にSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を実現する企業グループとなることを目指します。そのためにも、中期経営戦略の最終年度となる2021年度は、グループの社員同士が、時にはグループ外のパートナーの人たちも交えて、多様な人材による多様な価値観や視点を認め合い、お互いに建設的なぶつかり合いをすることで新しいアイデアを生み出し、中期経営戦略のコンセプト「金融リ・デザイン」をあらゆるかたちで具現化させていくサステナビリティ経営の取り組みを、一層加速させる1年にしたいと考えています。

Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ってVUCA(ブーカ)と呼ばれ、先を見通すことが従前にもまして難しくなっている現代において、10年先のことを予想することは不可能です。サステナビリティ経営は、そんな状況下においても新生銀行グループが30年後も50年後も持続可能な競争力を持つ会社であり続けるために必要な不断の努力を実践するための取り組みです。サステナビリティ経営を通じた持続可能な社会の実現に向けて、従業員とともに世の中の満たされないニーズに応える新しい商品・サービスを作ってお客さまに提供し、お客さまとは時にはビジネスパートナーとなってともに新しい市場を開拓し、投資家の皆さまとは新生銀行グループの中長期的な競争力を高めることに資する建設的な対話を続けていきたいと考えています。

新生銀行グループの持つ目に見えない競争力の源泉(無形資産の価値)についてご説明してきました。これからの課題は、新生銀行グループの持つ無形資産の価値を、より具体的に見える化することだと考えています。サステナビリティ経営の進捗状況をステークホルダーの皆さまにわかりやすくお示しする情報として、KPIを含めた非財務情報のかたちで無形資産の価値を見える化し、情報開示を一層充実させていきます。サステナビリティ経営の高度化を通じて、新生銀行グループがその社会的役割を果たしつつ、財務成績の中長期的な成長により、ステークホルダーの皆さまからのご期待に応えてまいります。どうぞこれからの新生銀行グループの成長にご期待ください。ステークホルダーの皆さまも、新生銀行グループとともに持続可能な社会の実現を目指しましょう。引き続き、皆さまからの一層のご支援とご協力をお願いいたします。

2021年7月
工藤 英之
代表取締役社長
工藤 英之

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