新生銀行からSBI新生銀行へ

皆さまには、日頃よりご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。


SBI新生銀行グループは2021年12月にSBIグループの一員となり、2022年度はSBIグループ入り後、実質的に最初の年度となりました。


SBIグループは、日本におけるインターネット金融サービスのパイオニアとして1999年に設立され、証券・銀行・保険などをコア事業とする世界でも類を見ない「企業生態系」を構築してきました。金融に限らず社会のさまざまな領域においてデジタル化が予測される現在は、さらにこの企業生態系を「デジタルスペース生態系」へと進化させようとしています。グループの連結従業員数は約1万9,000人、顧客基盤は4,600万に上る規模を有しており(2023年3月末時点、いずれも当行グループを含む)、当行グループは金融サービス事業のうち銀行業の中核的な企業として、重要な役割を担っております。

 

この1年は、「顧客中心主義の徹底」などの基本観のもと、顧客基盤の拡大と収益力の向上に努めてまいりました。「顧客中心主義」は、SBIグループ企業価値創出の源泉と位置づけられ、グループの全事業において貫かれております。個人ビジネスにおける商品・サービスの充実と競争力の大幅な強化、地方創生の具現化に向けた「トライアングル戦略」はその一例であり、こうした取り組みの結果、お客さまや市場からの期待は大きく変化したと感じております。

 

また2023年1月4日には、商号を「新生銀行」から「SBI新生銀行」に変更いたしました。新商号では、当行グループのこれまでの文化や歴史を大切にしながら、名実ともにSBIグループの一員であることを明確にいたしました。1月4日当日は、SBIグループの北尾吉孝代表も出席し、日本橋室町の本店で新商号記念セレモニーを開催し、新商号で新たなスタートを切りました。

中期経営計画初年度の成果

2022年度からスタートした中期経営計画「SBI新生銀行グループの中期ビジョン」の達成に向け、積極的な営業活動、顧客接点の拡大などを進めてまいりました。その結果、2022年度の業務粗利益は過去10年で最高の2,402億円、当期純利益も前期の 203億円から大幅に増加し427億円となりました。 また、営業性資産(市場性運用を含む)および預金 量は、それぞれ10.3兆円(前期比2.2兆円増)、9.9 兆円(同3.5兆円増)となり、中期ビジョンにおける目標を前倒しで達成いたしました。

 

中期ビジョン達成への取り組みでは、特にSBIグ ループとの連携に注力しております。

 

個人ビジネスにおいては、SBI証券との連携をはじめ、商品・サービスの充実と競争力の強化に注力しました。SBI証券の子会社であるSBIマネープラザ との共同店舗「SBI新生銀行マネープラザ」を池袋・ 銀座・梅田の3か所に出店し、幅広い品揃えとSBIグループの総合力を生かした提案力は、お客さまか らの高い評価をいただいております。また、預金金利の大幅な引き上げ、業界最低水準の住宅ローン金利、コンビニATM手数料の全面無料化のほか、SBI証券との口座同時開設など、利便性やベネフィットの向上を図った結果、個人のお客さまの口座数は4 年ぶりに純増に転じ、2022年度は約11万口座の増 加となりました。この4月には、SBI証券との口座間の入出金を自動化する「SBI新生コネクト」が新たにスタートし、商品・サービスの一層の強化に努 めております。

法人ビジネスにおいては、顧客や案件の紹介など により顧客基盤が大幅に拡大し、また、地域金融機関、SBIグループおよび当行グループが持つ機能を三位一体として活用する「トライアングル戦略」に 基づき、地方創生の具現化に向けた協働を推進しました。協調融資を中心に地方銀行との連携が増え、地域金融機関のプラットフォーマーとしてのプレゼンスが向上いたしました。また、新たに注力しております市場性運用においては、SBIグループの知見を活用して、運用資産の多様化と規模の拡大をしております。

 

こうした活動の結果、SBIグループとの連携による2022年度の収益効果は約50億円となり、中期ビ ジョンにて想定する150億円(2024年度)の達成 に向けて、順調な進捗であると評価しております。シナジー創出にかかる費用も約40億円発生しておりますが、商号変更コストを含む一時的なものが中 心となっております。なお、商号変更、グループ会社の再編、戦略的な人材配置、不採算事業・投資か らの撤退など、持続的な成長のための組織体制の整備も並行して進めております。

 

サステナビリティ経営の推進

サステナビリティは、当行グループの経営において最も重要な要素の一つと考えており、中期経営計画では、3つの基本戦略のひとつとして「事業を通じたサステナビリティの実現」を掲げております。これは、「金融機関である当行グループは、ビジネス を展開するお客さまを金融面にとどまらず、サステナビリティに関するリスクと機会の観点からお支えし、環境・社会課題の解決に取り組まれるお客さま を積極的に支援していくことによりポジティブなインパクトを創出し、持続可能な環境・社会の実現と 当行グループの持続的な成長の好循環につながる」、との考え方に基づいております。

 

法人ビジネスでは、サステナブルファイナンスへ の取り組みを強化しており、新たにポジティブ・イ ンパクト・ファイナンス、トランジション・ファイナンス、ZEH開発ファンドなどをメニューに加えました。個人ビジネスでは、お客さまからお預かりした預金が、環境・社会課題の解決に取り組むプロジェ クトへ融資される「サステナビリティ預金」の取り扱いを開始いたしました。

 

また気候変動への対応も重点課題のひとつと認識し、オフィス統合や再生可能エネルギー由来の電力への切り替えなどにより温室効果ガス排出量の削減に努めるとともに、投融資先の排出量についても把握に努めております。また対応状況はTCFDフレームワークに沿った開示を進めております。

 

当行グループは、すべての社員がその能力をいかんなく発揮し、やりがいをもって活躍することが、 お客さまへの最適な価値の提供につながり、組織が成長・変革するために欠かすことのできない最重要課題ととらえております。加えて、多様な特性・価値観を持つ人材が、お互いの存在を認め合い、受け入れ、それぞれの強みを活かし合いシナジーを生み出すことで、組織として新たな価値創造を続けてい くことができると考えております。そのため、持続的な価値創造を実現する多様な人材の獲得・確保を可能とする制度や風土づくりに積極的に取り組むなど、人的資本の向上を図るさまざまな取り組みを進めております。

中期ビジョンの達成とさらなる 成長に向けて

中期ビジョンの達成とさらなる成長に向けて内外の金融政策の変化や、インフレの高止まり、地政学的リスクの高まりなど、かつてなく不確実性が高い、混迷の時代を迎えております。このような環境下かにおいて、SBIグループでは、「デジタルスペース生態系」への進化に向け、「金融を核に金融を超える」として、AIやブロックチェーンをはじめとするテクノロジーの積極的な活用と、3つの多様化(顧客の多様化、金融商品・サービスの多様化、事業分 野の多様化)に取り組んでおります。

 

当行グループは、こうした全体戦略のもと、SBI グループの一員として一層のシナジーの創出を進めてまいります。商号変更の効果を最大限活用するほか、個人ビジネスでは、SBI証券などとの連携推進、法人ビジネスでは地方創生に向けた地域金融機関との取引拡大を目指します。また、顧客基盤および財務基盤の拡大を進めると同時に、「質の向上」と「量の拡大」の両立を図ってまいります。

 

2023年5月15日から6月23日の間、当行の親会社であるSBI地銀ホールディングスは当行株式の公 開買付けを行い、その結果、SBI地銀ホールディン グスは当行の議決権の53.74%を保有することとなりました。今後、株式併合により、当行の株主は SBI地銀ホールディングス、整理回収機構と預金保 険機構のみとなり、当行株式は上場廃止となる予定です。上場廃止後はより一層、機動的かつ柔軟な意 思決定や、SBIグループとのさらなる一体化、より中長期的な経営戦略の構築・遂行が可能となります。

また、SBIグループとの機能や顧客基盤の相互補完 によるビジネスのさらなる強化、SBIグループ全体 での最適な経営資源の迅速な配分、上場維持コスト の削減といったシナジーやメリットの実現が可能となると考えております。シナジーやメリットの実現を通じて、当行グループの収益力強化を通じた企業 価値の向上、および自己資本の充実を図ってまいり ます。

 

SBI新生銀行グループはSBIグループの一員として、引き続き「顧客中心主義」を徹底し、中期ビジョンの達成と持続的な成長を目指してまいります。

2023年7月

代表取締役社長

川島 克哉