社長メッセージ

代表取締役社長 工藤 英之

「金融リ・デザイン」という船で、ニューノーマル(新しい常態)という海原へ漕ぎ出す

世界規模での新型コロナウイルスの感染拡大は、ヒトとモノのグローバリゼーションに急ブレーキをかけ、物質的な世界を分断し、ブロック化しています。 一方で、医療現場の必死な努力が続くなか、「デジタル」を武器に、バーチャルな世界を通じ、新しい形で「日常」を取り戻そうという試行錯誤が始まっています。 ただし、この世界的な危機を乗り越えたあと、あるいは何とか飼い馴らしたあと、世界の価値観や行動様式は、それ以前には戻らない「ニューノーマル(新しい常態)」 なものになると言われます。人々の日常生活や社会活動と密接不可分である金融機能を担う者は、社会的インフラとしての責任と使命を果たすことに加え、 ニューノーマルの中で人の新しい日常を創り上げる活動に貢献しなければいけません。私たち新生銀行グループは、昨年より「金融リ・デザイン」を旗印にさまざまな新しい取り組みを行ってきました。この荒々しいニューノーマルという海原へ漕ぎ出すには、金融の在りを捉え直す「金融リ・デザイン」という船が必要だと今改めて思っています。


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によりお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、罹患された方々には心よりお見舞い申し上げます。 医療従事者の方々には厳しい環境に日々立ち向かっておられることに心より感謝します。
 新生銀行グループは、社員とその家族、お客さま、株主・投資家などをはじめとするステークホルダーの皆さまの健康と安全確保を最優先事項としながら、社会的インフラである 金融機関の任務を果たすべく最善の努力をしていきます。

 

不可逆的な変化

2019年はいくつもの大きな自然災害に見舞われた年でした。そして、2020年に入ってからは、COVID-19の世界的な感染拡大となりました。ヒト・モノの移動が制限され、経済活動も含めた人々の生活に大きな影響を及ぼしています。私たちは、今までと一変した生活を目の当たりにしています。私は、金融業を営む企業体として何ができるのか、何をすべきなのか考えています。企業グループとして、従業員やお客さまを守り、この難局を乗り切るのは当然のことです。さらに、新生銀行グループなりの強みを生かして、このうねりの中で生じる新たな価値観やニーズに応え、社会がよりよい方向に向かう手助けをすることが重要な経営課題であると考えています。このメッセージでは、新生銀行グループが、どのようにリスクに立ち向かい、どのように機会を捉えようとしているかについてお話しします。

守りを固める:リスクに立ち向かう

緊急対応として、新生銀行グループには以下の二つのことが求められました。


1. 社員自身とその家族、お客さま、そうしたみんなの命を守ること
2. 社会的インフラである金融機関としての責任を担い、基本的金融機能の安定的供給を通じて、お客さまと社会に貢献すること


1.については、「人と人との物理的な距離を取ること」が第一です。2019年後半からWindows10への移行に伴う社員へのラップトップPCの配布と柔軟な働き方改革への移行の合わせ技で、多くの業務において社員の在宅勤務が可能な制度と体制を整えてきました。その結果、この緊急事態においても、比較的スムーズに在宅勤務へシフトできています。とは言っても多くの社員にとっては慣れない働き方で、一日中パソコンに向かって黙々と仕事をすることになり、孤立した心理状況になります。そこで、人との「物理的」距離が離れるからこそ、人との「心理的」距離は一層近づけることを工夫しています。一体感や連帯感を生み出す基礎は、一対一のコミュニケーションですので、上司が部下の、あるいは社員一人ひとりが、相手の考えや気持ちをこれまで以上に想像しながら、具体的に直接的にコミュニケーションして、業務を遂行するようにしています。この経験を通じて、社員のコミュニケーションスキルがさらに向上し、ひいてはお客さまやその他外部のステークホルダーの皆さまと、よりオープンで質の高いコミュニケーションができるようになることを期待しています。
 2.について、社会活動や生活の支え役としての金融機関の使命を果たすため、まず一旦重要業務に絞り込んだ上で、その安定的な運営を確立することが第1段階、そして、今の「ソーシャル・ディスタンシング」状態が長期化することも視野に入れ、この業務体制をより持続可能な形にバージョンアップしていくのが第2段階となります。日々起こっている事態に対応しながら、一方で中長期の体制も考えていかねばならないのは、経営としてはこれまでと変わりませんが、これを社員一丸となって進めていきます。
守りを固めることは、縮こまることではありません。新生銀行グループのマテリアリティである「社会インフラの提供」と「顧客本位のサービス提供」を軸に、社会にとっての、そして新生銀行グループにとっての課題に、リスクを取って取り組みます。

踏み出す:機会を捉える

社会的インフラとして最低限の業務を受け身的に行っているだけでは、私たちは本来の役割を果たしてはいません。私たちは、お客さまに、社会に、価値を提供してこそ金融機関としての存在価値があります。いまこそ、金融機関としての存在価値を発揮すべきときでもあります。COVID-19の影響が長期化する可能性が高いなか、こうした状況をニューノーマルとして受け入れ、この変化の中で苦しむお客さまをどうサポートするかに加え、新しく生まれる行動様式、価値観、ニーズに対して、どうビジネス機会を捉えるか、そこでどんな価値を提供できるのか、など、変化を前向きに捉え行動したいと考えています。それを後押しするテクノロジーの進化もあります。私たちは、マテリアリティとして「社会・環境課題の解決に向けた役割」を掲げ、「金融アクセス」、「社会の適切な資金循環の創出」、「他者サービスとの融合による課題解決」を推進しています。この戦略軸は、COVID-19による変化によって、むしろ加速度を増して取り組むべき経営課題です。
 次に、この経営課題にどう取り組むか、すなわち、私たちが金融をどう「リ・デザイン(再設計)」し、新しい価値を社会に提供していくことができるか、社会にどのようなインパクトを生もうとしているか、についてご説明します。

「どちらか」ではなく、本当に実現すべきことを優先することにより「どちらも」叶える

二者択一の判断を迫られる多くの場合、判断基準、つまり価値観、プライオリティが明確であれば、選ぶこと自体は難しくありません。それが人であれ法人であれ、一つの意思決定主体であれば、それで完了します。ところが、外部の第三者との間では、意見を一致させることは容易ではありません。価値観が違います。それぞれに隠されたプライオリティがあったりします。「社内事情」はその典型です。そのような時、単に二者の意見の妥協点を探るのではなく、本来あるはずの、より高次な「目指すべきもの」に立ち返る、つまり、本当のプライオリティを探すことにより、AまたはBという二項対立から、AもBも満足するCという選択肢が見えてきます。
 また、金融が現在の「デザイン」になっていることの裏には、歴史的な経緯、そこから生じた「こうあるべきだ」という価値観・思い込みなど、何か理由があります。今目指していることを実現するために、金融をデザインし直す行為は、旧来のものを守りたい人との価値観の衝突を生みます。
 こうした二項対立から解放されるために、金融リ・デザインには視座を転換して上位の目的にかなう手段を見つけ出すクリエイティビティや、従来と異なる価値観を受け入れてみる柔軟性が求められます。
 こうしたクリエイティビティや異なる価値観を受け入れる個々人の柔軟性は、組織的能力(ケイパビリティ)を構築する重要な要素です。だからこそ、金融リ・デザインの考え方は、以下の二つの点で、私たちの金融ビジネスそのものと私たち金融人自身の振る舞い方に変革を起こします。

ビジネス:持続可能性・社会インパクト創出と「金融リ・デザイン」

企業価値向上は、社会に良いインパクトを生んだ結果です。それを生むために、私たちはどのような事業を行うべきなのか、どういった事業者・プロジェクトをサポートすべきなのか、そしてそれを実現するために自分たちに足りないものは何か、そういうことを考えています。そこでは、「金融とはこういうものだ」、あるいは「銀行とは、カード会社とは、リース会社とは、貸金業とは、…」という思い込みを捨てなければいけません。
 新生銀行グループでは、この観点から、金融・非金融を問わず外部パートナーと共創する取り組みをしています。具体的には、2019年8月に、株式会社NTTドコモ(以下、「ドコモ」)と協働し、ドコモ回線ご契約者向け「新生銀行スマートマネーレンディング」を開始しました。これは、新生銀行グループが無担保ローン事業で培ってきた審査ノウハウに加え、ドコモの幅広いビジネス展開によって得られたビッグデータから算出されるお客さまごとの信用スコア「ドコモスコアリング」も活用することで、お客さまにより最適化された取引条件を提示するものです。12月には、USEN-NEXT HOLDINGS社との共同金融事業立ち上げを発表しました。これは、USEN-NEXT GROUPの持つ約75万の小規模事業者向けに、新生銀行グループの持つショッピングクレジット(割賦信用販売)、ベンダーリース、事業用クレジット、レンディングなどの金融サービスを提供するものです。2020年1月には、セブン銀行と共同で外国人居住者に向けた与信関連サービスを提供するべく「株式会社 Credd Finance(クレドファイナンス)」を設立しました。
 外部パートナーとの共創をカンタンに実現するためのプラットフォームとして、スマートフォンアプリやAPI連携が可能なネオバンク・プラットフォーム「BANKIT®」も3月にリリースしました。これは、新生銀行グループが有する決済、為替および与信機能などの金融サービスを、パートナー企業がカフェテリア形式で選んで利用できるものです。自前の金融プラットフォームを持たないパートナー企業も、「BANKIT®」を利用して、自らのお客さまに金融サービスを提供することが可能となります。
 これらの取り組みは、新生銀行グループだけではできない、そしてパートナー企業だけでもできない、お客さまが「価値」を感じられるサービスをパートナーと共に創り上げるものばかりです。

組織的能力(ケイパビリティ):多様性の尊重と「金融リ・デザイン」

事業を支える組織の能力を強化するという目的において、多様性(ダイバーシティ)の実現とその尊重は、企業戦略の一部です。多様性の一丁目一番地は女性の活躍推進で、それはもちろん最重要課題ですが、多様性とは、性別、人種、宗教、出自だけではありません。そもそもこの世に同じ人はいないわけですから、個々人がそこに存在し、それぞれの価値観や、モノの見方・独自の切り口などを表現するだけで多様性を提供しているのです。そして、それぞれから発信されるメッセージは、それを受ける人によってさまざまに解釈されますが、そこで視点や視座を変えて物事を見る能力や、相手のメッセージの裏にある価値観を受け止める感性がないと、この多様性を生かすことができません。これがインクルージョンの意味です。こうしたダイバーシティやインクルージョンの意識がないと、「金融リ・デザイン」はうまく進められません。
 では、どうやってダイバーシティやインクルージョンに対する意識を組織全体に浸透・醸成させていくのか。ビジネスを通して、社内外の研修を通して、カルチャーの違う人の価値観に出来るだけ多く現実に触れ、自分事として想像してみることで、マネジメントや社員が「気づき」の経験値を増やしていくという日々の鍛錬の継続だろうと考えています。その意味で、まず「一丁目一番地」と言える女性活躍推進について施策と進捗をご説明します。新生銀行グループでは、「30%Club Japan※1」や「女性のエンパワーメント原則※2」といった外部イニシアティブに参画し、グループ女性活躍推進委員会を設置し、強力に推し進めているところです。取締役会では7人の取締役のうち2名が女性です(2020年6月末時点)。監査役3名のうち2名が女性ですから、合計で40%が女性です。一方で課題もあります。それは、執行のシニアレベルでの女性比率の低さです。マネージャー層を含む管理職層の比率は比較的高い方ですが(32.7%)、執行役員レベルでは35名のうち女性は6名、17%しかいませんし、次世代の女性管理職候補となる人材層もまだまだ育成が足りません。そこで、村山利栄取締役、赤松育子監査役、金野志保監査役から、ダイバーシティや女性活躍に関してグループ社員向けにメッセージを発信したり、他社で役員あるいは管理職として活躍された方による講演会や男女脳差理解による組織力アップ講座を開催したりすることに加え、2019年から女性人材育成プログラムを開始し、メンター制度を導入しています。さらに、ダイバーシティ推進をスピード感を持って堅固に進めていくために、2020年度から管理職の人事評価項目に「ダイバーシティ推進目標」を設定しています。
 女性活躍推進だけではありません。一人ひとりの異なる個性・強みが組織の力となるよう、育児を担う社員の両立支援、がん罹患者の働きやすさ、障がいを持つ社員の活躍推進などさまざまな支援を行っています。「金融リ・デザイン」という船を進めるため、乗組員全員が互いを尊重しながら一人ひとり活躍できるよう、ケイパビリティの強化に取り組んでいきます。

※1 英国から始まった取締役会を含む企業の重要意思決定機関に占める女性の割合の向上を目的とする世界的キャンペーン
※2 国連グローバル・コンパクト(UNGC)と国連女性機関(UN Women)が共同で定めた行動原則

ステークホルダーへのメッセージ

ニューノーマルがどのような世界になるのか、政治家、学者、メディア、経営者、社会活動家、市井の人々がそれぞれ想像し、考え、行動しながら、在りたい世界を創っていく。そうした大きなうねり、ダイナミズムを感じます。そのような環境下においても、人々の日常生活と不可分である金融機能は重要で在り続けるでしょう。そして、その金融機能を担う者は、社会的インフラとしての責任と使命を果たすことに加え、ニューノーマルを生かす創造性を発揮することがより強く求められます。私たち新生銀行グループはその自覚を新たにし、「金融リ・デザイン」という船に乗り、ニューノーマルという海原へ漕ぎ出します。私たち従業員一同は、さまざまなパートナー企業と価値を共創しながら、新生銀行グループの存在意義を研ぎ澄ますべく一層の努力を重ねてまいります。ステークホルダーの皆さまからの引き続きのご支援をよろしくお願い申し上げます。

2020年7月
工藤 英之
代表取締役社長
工藤 英之

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