2021年以降の住宅ローン金利はどうなる?予想できる?

大手金融機関の2020年の住宅ローンの金利の推移を確認したところ、変動金利は年0.5%以下、固定金利は、年1.0%前後(金利を固定する期間により金利水準は異なります)で推移していました。一方で、「いつまで今の金利で推移するの?」と疑問に思っている人は多いと思いますし、実は、2021年3月などのようにはいくつかの金融機関の住宅ローンの金利(固定金利)が上がる月もあります。

少なくとも、今の金利水準で永遠に推移することはないので、住宅ローンの金利がどのように推移するのか、5年後・10年後に住宅ローンの金利がどのぐらいの水準になるのか、など、今後の金利水準を予想する意識を持つことが大切です。

現時点の日本においては、住宅ローンの金利の動向を予想するには、日銀の金融政策と住宅ローン金利の関連性を理解することが大切になってきますので、今回の記事では、住宅ローンの金利がどのような仕組みで決まるのかと、また、住宅ローン金利が上がってしまうケースに備えるためのどのような方法が考えられるのかを解説したいと思います。

住宅ローン金利には変動と固定の2種類がある

住宅ローンの金利は大きく分けて変動金利と固定金利の2種類に分けられます。一般的な住宅ローンの場合、住宅ローンの利用者が実際に借りる時の適用される「借入金利」は、各金融機関が定める“基準金利”から、同じく、各金融機関が定める“金利の優遇幅”を引いた金利です。

大半の銀行では、公式サイトなどで、基準金利と優遇幅、そして借入金利を掲載していますので、それぞれの関係性を確認しておくようにしましょう。

まず、住宅ローンの今後の金利を予想するには、借入金利を決定する“基準金利”と“金利の優遇幅”が何に影響を受けているのかを理解しておくと良いでしょう。

<基準金利と借入金利の関係>

基準金利と借入金利の関係

1. 変動金利の基準金利

一般的に変動金利の基準金利は日銀の政策金利の影響を受けます。日本は1999年に実施されたゼロ金利政策以降、政策金利はほぼゼロの状態が続いているので、変動金利の基準金利は、長期に渡り低い水準で安定しています。変動金利は、借り入れ時に決定した優遇幅が完済するまで適用されます。しかし、もし日銀が政策金利を引き上げた場合、基準金利が上昇し、借入金利も上がる可能性があります。

2. 固定金利の基準金利

一般的に固定金利の基準金利は、債券市場の金利に影響を受けるといわれています。したがって、日銀が決定する政策金利とは異なり、市場活動によって自然と決まってくるもの、と認識されるわけです。しかし近年、私たちはしばしば日銀の国債買い入れのニュースを耳にします。このことから、実態としては、日銀の行動が債券金利の調整につながるとも考えられます。つまり、固定金利のもとになる基準金利の先行きは、日銀の国債買い入れ政策次第と考えらることができます(少なくとも大きな影響を受けます)。なお、完済までの金利が最初に確定する固定金利は、借りた後に基準金利が上がっても、返済期間の途中から借入金利が上がることはありません。
この「日銀が政策金利と10年物国債の金利をコントロールしていく金融政策」はイールドカーブ・コントロールと呼ばれています。

3. 各銀行の優遇幅

上記の基準金利に関しては、政策金利や債券金利の影響を受けるため、銀行が自由に決定することはできませんでした。しかし、基準金利からどれだけ金利を引き下げるかという「優遇幅」は、銀行が独自で決めることができます。各銀行は、顧客獲得のため優遇幅を高めて借入金利を引き下げてきました。銀行同士の競争原理が働いていることもあり一定の優遇幅が維持される傾向にあるようです。

<変動金利と固定金利の決まり方>

銀行の基準金利に影響する金利 実際の借入金利
変動金利 日銀の政策金利 銀行の基準金利―優遇幅
固定金利 日本の債券市場の金利

日銀の政策金利(短期金利)は上がるのか?

ここまでの説明で、住宅ローンの金利を予想するうえで、日銀の金融政策が重要なことはご理解いただけたかもしれません。では、日銀が決定している政策金利は、今後、上がるのでしょうか。

それを考えるには政策金利の動向を見ていく必要があります。

政策金利とは、民間の金融機関の預金金利や貸出金利を日銀が誘導する金利のことです。現状は民間銀行が日銀に預け入れをする時の金利を▲0.1%としています(2021年5月7日現在)。この金利が、間接的に民間銀行の預金金利や貸出金利に影響を与えています。

普通預金金利がほぼゼロに近いことや、住宅ローンの金利の基準金利が低位で安定しているのは、政策金利がほぼゼロ状態の状況が続いていることが影響しているというわけです。

日銀は2013年1月から消費者物価の前年比上昇率2%という物価安定目標を定め、その目標を達成するために、2016年から政策金利をマイナスにするマイナス金利政策を開始しました。日銀の政策は、「金利を下げると企業や消費者がお金を借りやすくなるため経済の動きが活発化し物価が上がる」、というロジックに基づいていますので、素直に考えると日銀の金融政策の“目標”を達成できるまでは、政策金利の大きく引き上げることは難しいと考えることができます。

現状総務省統計局発表の消費者物価指数は表の通りであり、コロナ前を含めても前年比上昇率2%には届いていません。仮に、物価上昇の目標が達成できたとしても、日本のように低金利に慣れている国民にとって「利上げ」は相当なインパクトです。

経済的なショックが起きないようにするという観点でも、日銀が安易にに金利を引き上げること難しいと考えています。

消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の推移

2018年 2019年 2020年
生鮮食品を除く総合 0.9% 0.6% ▲0.2%

(出所)総務省統計局 2015年基準 消費者物価指数 全国2021年(令和)2月分(2021年3月19日公表)を元に筆者作成

債券金利(長期金利)は上がるのか?

長期金利が上がると住宅ローンの固定金利が上がってしまいます。実は、2021年に入ってから固定金利型の住宅ローンである「フラット35」の借入金利は上昇しています。金利の上昇はフラット35だけではありません。いくつもの金融機関の固定金利も上昇しています。
下記のグラフ1とグラフ2を見ると、フラット35の金利(固定金利)が上がるタイミングと10年物国債の金利が上がるタイミングは、なんとなく一致していることがわかります。2021年に入ってから日本の10年物国債の金利が上昇したので、固定金利も上がったとも見て取れます。

では、このまま長期金利が上昇し、固定金利も上昇し続けるかといえば、話はそう単純ではありません。理由は、既述した日銀のイールドカーブ・コントロールによって、国債の金利が上がらないよう抑え込まれていることも一つの原因かもしれません。
ただ見逃せない変化もあります。2021年3月19日の金融政策決定会合で日銀は、長期金利の変動幅を±0.25%程度とすることを発表しました。それまでは、変動幅の許容範囲は±0.20%とされていたので、若干国債の金利が上昇する余地が生まれたといえます。もちろん、この政策変更は国債金利の変動幅を広げただけであり、イールドカーブ・コントロールを終了したというわけではありません。日銀による低金利政策は現在も継続中です。しかし、先を見通すという意味では、足元で起こったこうした日銀の態度の変化はしっかり抑えておくと良いでしょう。

<グラフ1:フラット35借入金利の最低金利の推移>
(借入機関21年〜35年、融資率9割以下、新機構団信付き)

フラット35借入金利の最低金利の推移

(出所)住宅金融支援機構【フラット35】借入金利の推移
平成29年10月以降の資料より筆者作成

<グラフ2:日本の10年物国債の金利推移>

日本の10年物国債の金利推移

(出所)財務省国債金利情報 より筆者作成

借入金利の優遇幅は続くのか?

1999年のゼロ金利政策以降の約20年間、変動金利の基準金利は下げ止まっているのに、それでも各銀行の借入金利が下がり続けていたのは、優遇幅が広がってきたと考えられます。
銀行同士の競争原理が働いている点で一定の優遇幅は続く可能性があります。しかし、金利の絶対値がゼロ%に近づいているので、さらなる金利の引き下げは大きくは期待できないのではないでしょうか。

金利が上がる場合の備え

住宅は、誰しもできるだけ自身の理想に近づけたいものです。それゆえ、将来の支払い余力をよく考えずに、住宅ローンを目一杯借りる方もいらっしゃるかもしれません。しかしその結果、金利が上昇した場合の毎月返済額の増加に耐えられなくなる可能性があります。このようなことが起きないようにする対策としては以下が考えられるのではないでしょうか。

  • 住宅ローンシミュレーションで(金利が上昇した場合を想定して)今より高い金利を入力して試算してみる。
  • 預金などの返済原資を十分に残してローンの計画を組む。

さらに、収入自体が下がってしまった場合のリスクも想定しておくとより安心だと考えます。最近は住宅ローンをインターネットで探す方が多いですが、いざ借りる時になると不安がよぎるものです。店頭に行かなくても、オンラインのビデオ相談ができる銀行はありますので、不確かな未来を自分1人で悩まずに、返済計画や金利が上がった場合の対策を相談しておくと安心かもしれません。

【執筆者】
遠藤功二(えんどうこうじ)
・CFPR
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)

株式、債券、金利、為替、REIT等、マーケットの変動がその価格等に影響を及ぼす金融商品を購入する際は、必ず個別金融商品の商品説明書等をご覧・ご確認いただき、マーケットの動向以外に、各金融商品にかかる元本割れなどの固有のリスクや各種手数料についても十分ご確認いただいた上でご判断ください。

本稿は、執筆者が制作したもので、新生銀行が特定の金融商品の売買を勧誘・推奨するものではありません。

  • ・本資料は情報提供を目的としたものであり、新生銀行の投資方針や相場観等を示唆するものではありません。
  • ・金融商品取引を検討される場合には、別途当該金融商品の資料を良くお読みいただき、充分にご理解されたうえで、お客さまご自身の責任と判断でなさるようお願いいたします。
  • ・上記資料は執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を新生銀行が保証するものではありません。
  • ・また本稿の内容は2021年2月28日時点の情報に基づきます。

当行では具体的な税額の計算、および、税務申告書類作成にかかる相談業務はおこなっておりません。個別の取り扱いについては、税理士等の専門家、または所轄の税務署にご確認ください。

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